「テラスハウス」に出演していた木村花さんが誹謗中傷をきっかけに自殺したことがきっかけで、侮辱罪の厳罰化が検討されています。今回の記事では、侮辱罪がどのような行為を指しているのかまた、これから侮辱罪がどれくらい厳罰化されるのかを解説していきます。
本記事で分かること
- 木村花さんの事件の概要
- 侮辱罪とは
- 今後侮辱罪がどのように厳罰化されるのか
本記事を参考に、ネット上での誹謗中傷行為により問われる罪について、理解を深めていただければと思います。なお、次の記事も合わせて参考にしてみてくださいね。
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誹謗中傷がきっかけで自殺した木村花さんの事件とは?
共同生活の様子を記録するフジテレビ番組「テラスハウス」に出演していた木村花さん。番組内での言動についてTwitter上で「ねえねえ。いつ死ぬの?」「死ねや、クソが」「きもい」などと書き込んでいた男2人が書類送検されました。
しかし、男2人は「侮辱罪」で略式起訴され、罰則は科料9,000円のみでした。その罪の軽さに侮辱罪の罰則強化の声が上がっていたのです。
聞き馴染みのない「科料」ですが、比較的軽微な犯罪に対して科せられる金銭罰を意味しており、刑罰の一種として定められているものとなります。似たような意味を持つ言葉で「過料」がありますが、過料と科料の1番の違いは刑罰か否かという点です。
過料は、行政上の義務違反に対するペナルティーとして義務違反者に対して科せられる金銭的な罰という意味を持っています。科料は、犯罪行為に対して科せられる刑罰ですので、その差は一目瞭然だと思います。
侮辱罪となる行為は?
今回木村花さんが受けた侮辱罪ですが、一体どのような行為を指しているのかあなたはしっかりと理解しているでしょうか?あなたが「これくらい大丈夫だろう」と思っている行為でも実は侮辱罪に値するかもしれません。侮辱罪とならないとしても他人を傷つけるような発言は絶対に行わないようにしましょう。
誹謗中傷による見下した発言は該当の恐れあり
侮辱罪とは、誹謗中傷によって相手を見下し、はずかしめた場合に条件を満たすことで成立する犯罪です。
侮辱罪が成立しますと、1日以上30日未満の間、刑事施設に拘置される「拘留」、又は1,000円以上10,000円未満の制裁金を納付する必要がある「科料」のどちらかが科されます。
誹謗中傷は侮辱罪以外にも、「名誉毀損罪」や「信用毀損罪」などの罪に問えますが、その中でも侮辱罪は比較的軽い罪となっています。しかし、比較的軽い罪だからと言って決して許されるわけではありません。
侮辱罪は、名誉毀損罪と違い犯罪ではありますが、実はこの2つには相違点があります。名誉毀損罪の構成要件は、「公然と」「事実を摘示し」「人の名誉を毀損している」の3つです。しかし、侮辱罪の構成要件は「事実を摘示し」が必要ないのです。
例えば、SNS上で「あの人は前科を持っているらしい」などと書き込んだとします。この場合は、具体的な事実を摘示しているとして名誉毀損罪に該当する可能性があります。ただし、ここでいう事実とは、その真意を問うものではありません。一方で侮辱罪が適用される可能性があるのは「死ね」「キモい」などの暴言の類になるのです。
侮辱罪が厳罰化されるとどうなるのか
木村花さんの事件をきっかけに国は、侮辱罪の厳罰化に乗り出しています。2021年9月16日には、上川陽子法務大臣が法制審議会で刑法の侮辱罪の厳罰化を諮問(しもん)すると発表しました。
SNSなどでの誹謗中傷に対する書き込みに対する措置として、具体的には現在の「30日未満の拘留か1万円未満の科料」から「1年以下の懲役・禁錮または30万円以下の罰金」に改定する案を諮問(しもん)することになっています。
仮にこの侮辱罪の厳罰化が改定されると、公訴の時効は1年から3年となり過去の書き込みについて公訴できる期間が延びることになります。
誹謗中傷は対策を行うことが大切
自分がいくら注意しても誹謗中傷のターゲットになることはあるかもしれません。しかし、誹謗中傷を受けないように事前に対策を取っていれば、未然に防ぐことが可能です。
また、万が一誹謗中傷の被害に遭ってしまったとしてもその後の対処方法をきちんと理解しておくことで、相手を特定したり損害賠償を求めることが可能になるかもしれません。
誹謗中傷を未然に防ぐ方法は?
誹謗中傷の被害に遭わないためには、以下の2つに注意するようにしましょう。
- SNSでの発言や拡散に気を付ける
- 必要以上に反応しない
SNSでの発言や拡散に気を付ける
SNSで誹謗中傷のターゲットになるには、必ずと言っていいほど何か理由があります。木村花さんの場合は、テラスハウスでの発言がきっかけで誹謗中傷が始まってしまいました。発言の受け止め方は人それぞれですが、誹謗中傷をしてくる人たちは嫉妬や自分自身を正当化するために攻撃してくる傾向があります。
そのため、周りの人を刺激するような発言はなるべく控えたほうが良いでしょう。例えば、「まだ〇〇している人っているの?」や「〇〇な人は時代に乗り遅れている」などは、人によっては自分が見下されているような気分になる人もいるかもしれません。
わざわざそのような発言をする必要はないとも考えられますので、このような発言は行わないようにしましょう。「誰もみてないからこれくらい大丈夫だろう」と思って発信してしまうと、SNSでは瞬く間に拡散されてしまいますので「これくらい大丈夫」などとは思わないようにしましょう。
必要以上に反応しない
仮に、アンチコメントのような言葉を言われたとしても大切なことは「必要以上に反応しない」ということです。誹謗中傷をしてくる人は、何かにつけて誹謗中傷をしてきます。そしてリアクションをすればするほど内容がエスカレートしてしまう場合や、新たな人から誹謗中傷をされる危険性も高いのです。
そのため、誹謗中傷を受けたとしても反論したい気持ちをグッと堪えて受け流すようにしましょう。誹謗中傷を行っている人物はリアクションが返ってこないとつまらないと思い自然と離れてくれることが多いのです。
誹謗中傷があまりにもひどい時は然るべき方法で対処する
「誹謗中傷があまりにもひどい」「無視をしているのにどんどん誹謗中傷がエスカレートする」などの場合は、然るべき方法で対処することが大切です。
まず誹謗中傷を受けた場合は、証拠となるようなコメントをスクショなどであらかじめ保存するようにしましょう。なぜ誹謗中傷を受けることになったのか、誹謗中傷のコメントを言われた前後のやりとりも重要になりますので合わせて保存するようにします。
誹謗中傷の被害を受けたときに行うべき方法はこちらです。
- サイト運営元へ削除依頼を行う
- 弁護士へ相談する
- 誹謗中傷専門企業へ相談する
どのようなことを行えば良いのか、1つずつみていきましょう。
サイト運営元へ削除依頼を行う
まず最初に行うべき対策は、サイト運営元への削除依頼です。SNSや掲示板などには、問い合わせフォームや不適切な発言や投稿を行っている旨を報告するためのフォームが用意されています。掲示板などでは、サイトの上に「お問い合わせはこちら」「コンタクト」などの名称でフォームが設置されています。その中に削除依頼についても書かれていると思いますので、誹謗中傷の内容や誹謗中傷に値するコメントが書かれているため削除して欲しい旨の依頼を行います。
サイト運営元への削除依頼は、自分自身で行うことができますし、削除するための費用もかからないため簡単に行うことができる対策です。
弁護士へ相談する
個人でサイトの運営元へ削除依頼をしたにも関わらず、個人からの削除依頼であるがために対応してもらえないこともあるかもしれません。そのような場合は、弁護士に相談をしてみるのも誹謗中傷対策の1つだと言えます。
弁護士へ相談を行い、正式に依頼をすると誹謗中傷を書き込んだ人物は誰なのかを調べることが可能です。また、誹謗中傷のコメントの削除ができない場合は、サイトの管理者に対して削除や損害賠償を求める訴訟、誹謗中傷を行った人物に対しての損害賠償を行うことも可能です。
仮に誹謗中傷を行った人物を特定する場合は、以下の流れで行われます。
- 投稿されたサイトの管理者等に相手のIPアドレス等の開示を請求
- IPアドレス等から相手の利用するアクセスプロバイダ(インターネット接続サービスを提供する事業者)を特定
- アクセスプロバイダに相手の個人情報の開示を請求
誹謗中傷専門企業へ相談する
サイト運営元や弁護士に相談を行ったとしても、書き込まれたコメントが誹謗中傷に値しないと判断された場合は対応してもらうことが難しいなんてこともあるかもしれません。誹謗中傷に値してなくても、傷ついた事実があるのであれば泣き寝入りせずに、誹謗中傷専門企業へ相談をしてみてはいかがでしょうか。
弊社は誹謗中傷に関するプロフェッショナルですので、削除以外の方法で解決することはできないのか、インターネット上で人目につかないためにはどうしたら良いのかを丁寧にご提案いたします。
【まとめ】侮辱罪が厳罰化されることで誹謗中傷減少にもつながる
今回は、侮辱罪の厳罰化について解説しました。簡単にポイントをまとめておきます。
本記事のポイント
侮辱罪が厳罰化される動きが高まっている
侮辱罪が改定されれば公訴できる期間が延びる
侮辱罪の厳罰化で誹謗中傷減少に繋がるかもしれない
誹謗中傷の被害を防ぐためには対策を取ることが大切
誹謗中傷の被害に遭った場合は相談を行う
今回は、侮辱罪の厳罰化や誹謗中傷について解説しました。SNSの急速な普及とともに誹謗中傷の件数も増加傾向にあります。どのような理由があっても誹謗中傷を行う行為は、許されるものではありません。軽はずみな気持ちで「死ね」「バカ」などの言葉を使うと侮辱罪になるかもしれませんし、「殺す」は脅迫罪となるかもしれません。
言葉遣いや相手を傷つけるような言葉は遣わずに正しくSNSやインターネットを活用するようにしましょう。,