誹謗中傷とは、根拠のない悪口を言いふらし、他人を傷つけることです。特に芸能人は人目に触れる機会が多く、誹謗中傷の被害に遭いやすいと言えます。
芸能人のYouTubeやTwitterなどを閲覧すると、ほぼ必ずと言ってもいいほど誹謗中傷の書き込みがあります。多くの芸能人は誹謗中傷を無視していますが、誹謗中傷は立派な犯罪です。
立派な犯罪になるのであれば、誹謗中傷してきた人を逮捕して罪に問うことができるのか気になるところだと思います。
そのような方の為に、この記事では芸能人に対して誹謗中傷をしている人を逮捕することができる可能性や、問うことができる罪について具体的にまとめましたので、ぜひ参考にしてみてください。
誹謗中傷をしている人を逮捕することは出来るのか?
結論から言いますと、刑事法令に規定されている犯罪行為に当てはまり、誹謗中傷により被害を受けているということを証明することが出来れば、犯人を逮捕することは可能です。
しかし、「被害を受けているが、罰すほどでもない」と判断されてしまえば、事件として立件される可能性は極めて低くなります。
反対に、相手の社会的信用を著しく落とした場合や相手の名誉を著しく毀損した場合などは、「被害が大きい」と判断され、事件として立件される可能性が高くなります。
例えば、「○○株式会社は脱税をしている最悪な会社だ!」という誹謗中傷をしたAさんがいたとしましょう。
Aさんが、ブログやSNSなどでこのような誹謗中傷を行ってしまうと、「あの会社って犯罪行為をしている会社だったのか」と取引先やユーザーに捉えられてしまう場合があり、その会社の信用を著しく落としてしまう可能性があります。
しかし、人がいない森の中で誹謗中傷をしたとしたら、まず周りに広がる危険性はありません。周りに広がる危険性がないということは、誹謗中傷をされた会社の信用が落ちてしまう可能性も低いと考えられます。
この場合、同じ誹謗中傷であってもブログやSNSで発信したAさんは逮捕される可能性が高く、森の中で誹謗中傷をしたAさんは逮捕される可能性が低いと言えます。
これを「可罰的違法性」というのですが、上記の例のように被害の大きさによっても逮捕されるかどうかは変わってきます。
誹謗中傷は3つの罪に問える可能性が高い
誹謗中傷は様々な罪に問える場合がありますが、中でもこれから紹介する3つの罪に問える可能性が高いと言えますので、その3つの罪を具体的に説明していきます。
名誉毀損罪
まず誹謗中傷は、名誉毀損罪が成立する場合があります。
名誉毀損罪とは?
名誉毀損罪とは、公然と事実を摘示して人の名誉を毀損すること。
少し難しい言葉ですので、それぞれを言葉の意味を分かりやすく説明していきます。
「公然と」とは
「公然と」とは、不特定多数に対するという意味。「不特定」もしくは「多数」のどちらかに当てはまっているのであれば、「公然と」が成立する。
「不特定」というのは表参道を歩いている人たちやスーパーで買い物をしている人たちなどを指します。
「多数」に関しては、明確な基準がありませんが過去の事例を参考にしますと「15人以上」であれば、多数と認められます。
例えば、「Aさんに誹謗中傷のメールを送った」というのは特定少数として扱われますが、「SNSでAさんの誹謗中傷を投稿した」という場合は「不特定多数」として扱われます。
「事実を摘示して」とは
「事実を摘示して」とは、本当か嘘かは別にして、具体的な事柄を取り上げているかどうかという意味。「証拠によって決めることが出来るかどうか」という意味も持つ。
例えば「A社のシステムよりもB社のシステムの方が良い」という感想があったとしましょう。この場合は、もちろん「B社のシステムの方が良い」という人もいます。
これに関しては正直、人ぞれぞれという答えになりますので「証拠を用いてどっちのシステムが良いか決めよう」という訳にはいきません。それでは、例を変えてみましょう。次は「A社は脱税をしている」という情報を用いて考えてみます。
これに関しては、証拠をもとに本当か嘘かを決めることが出来ます。このように後者のような情報をここでは、「事実」と定めています。
「人の名誉を毀損する」とは?
「人の名誉を毀損する」とは、人の社会的名誉や社会的評価を毀損すること。
人の名誉を毀損するという場合の「名誉」とは、社会的名誉もしくは社会的評価を指していますので、自分の自尊心を傷つけられたという場合は刑法上、名誉毀損とは認められません。
自尊心というのはどちらかといいますと「名誉感情」の方に当てはまりますので、刑法上では、名誉毀損ではなく「名誉感情の毀損」として扱われます。ここまで以下の言葉の説明をしてきました。
- 公然と
- 事実を摘示して
- 人の名誉を毀損する
名誉毀損は、上記3つに当てはまった時に成立します。
名誉毀損罪が成立しますと、民事上の損害賠償を請求される他、刑事上の名誉毀損罪として扱われ「3年以下の懲役若しくは禁錮又は50万円以下の罰金」という刑を科される場合があります。
侮辱罪
誹謗中傷は、侮辱罪に問える場合もあります。
侮辱罪とは?
侮辱罪とは、事実を摘示していなくても公然と人を侮辱すること。
一見、名誉毀損罪と似ている罪ですが、名誉毀損罪と侮辱罪の違いは以下の通りです。
ポイント
- 名誉毀損罪:事実を摘示した時に成立する
- 侮辱罪:事実を摘示していなくても成立する。
「事実」とは、本当か嘘かは別にして、具体的な事柄を取り上げているかどうかという意味でした。
つまり名誉毀損罪は「不倫している」「脱税をしている」というように具体的な事柄を取り上げなければ成立しませんが、侮辱罪に関しては「バカ」「アホ」という曖昧な言葉でも成立します。
侮辱罪が成立しますと、1日以上30日未満の間、刑事施設に拘置される拘留、又は1,000円以上10,000円未満の制裁金を納付するという科料のどちらかが課されます。
信用毀損罪
誹謗中傷は、信用毀損罪に問える場合があります。
信用毀損罪とは?
信用毀損罪とは、虚像の情報を流す、人を騙すというような行為によって他人の信用を毀損した時に成立する罪。
例えば、SNSで「○○さんと○○さんは不倫をしているらしい」という情報や「○○さんは、マスクを転売して1億儲けたらしい」という情報を投稿したとしましょう。
これらが真実であれば、信用毀損罪は成立しませんが、嘘の情報と証明することが出来れば信用毀損罪が成立します。
信用毀損罪が成立した場合は、「3年以下の懲役又は50万円以下の罰金」という刑が科されます。
芸能人を誹謗中傷している人を逮捕することは出来るのかどうかまとめ
この記事では、芸能人を誹謗中傷している人を逮捕することは出来るのかどうかということについて具体的にまとめました。
もう一度おさらいすると、芸能人を誹謗中傷している人を逮捕することは出来るのかどうかの結論は以下の通りです。
まとめ
刑事法令に規定されている犯罪行為に当てはまり、誹謗中傷により被害を受けているということを証明することが出来れば、犯人を逮捕することが出来る。
誹謗中傷は名誉毀損罪や侮辱罪、そして信用毀損罪が成立する場合があります。
特に芸能人であれば、誹謗中傷の被害に遭ってしまう可能性も高いと考えられますので、誹謗中傷された際は我慢せずにすぐに弁護士や警察に相談しましょう。