SNSやネット掲示板でよく見かけるようになった誹謗中傷。ネット上の誹謗中傷被害が年々増加していることを受け、政府も誹謗中傷をした加害者の電話番号を比較的簡単に開示できるようにする方向で議論を進めていると言われています。
リアルな世界でもネット世界でも収まることがない誹謗中傷ですが「そもそも誹謗中傷の定義は何なのか?」という疑問を抱えている人も多いかと思います。そのような方のために、この記事では誹謗中傷の定義について具体例を交えながらまとめましたので、ぜひ参考にしてみてください。
誹謗中傷の定義について解説
そもそも「誹謗中傷」という言葉は、嘘の情報や具体的な理由がない情報で相手を罵り貶めることという意味を持つ「誹謗」と、特定の人物に対して嫌がらせや悪口を発することという意味を持つ「中傷」という2つの言葉から成り立っています。つまり、「誹謗中傷」の定義は以下の通りです。
誹謗中傷の定義とは?
誹謗中傷の定義は、虚像の情報や具体的な理由がない情報で特定の人物を罵り貶め、嫌がらせや悪口を発すること。
例えば、「○○さんは、副業で詐欺をしているらしい」と悪口や「お前はバカだからこの世から消えろ」という悪口が誹謗中傷に当たります。
誹謗中傷に当てはまる発言の具体例
先ほど、誹謗中傷の定義について説明しましたが、まだピンとこないという人も多いかと思います。そのような方のために、ここでは誹謗中傷に当てはまる発言の具体例を紹介していきます。
誹謗中傷に当てはまる発言の具体例
- ○○部の○○さんは、毎週キャバクラで豪遊しているらしいよ。
- 貧乏人が俺に近寄るな!この人間の失敗作!
- ○○さんは、悪徳商法にハマって借金地獄に陥っているらしいよ。
- ○○レストランは、手を洗わないで料理している。最悪なレストランだ。
- ○○ラーメン屋の店長は元詐欺師!さっさと潰れてしまえ!
- ○○スーパーに勤めている○○さんって人、不潔すぎるから気持ち悪い。
- ○○さんは金儲けのことしか考えていない!人間として終わっている。
- YouTuberの○○さんって気持ち悪すぎる!良くあの顔を出そうと思ったよね
- お前はアホすぎる!人間辞めてしまえ!
- ○○会社のメルマガで紹介されている商品は全部詐欺商品らしい
上記のように、虚像の情報や具体的な理由がない情報で特定の人物を罵り貶め、嫌がらせや悪口に該当する発言は高い確率で誹謗中傷に当てはまります。
罪の「定義」に当てはまっている誹謗中傷は犯罪として扱われる可能性がある
度を超えた誹謗中傷をした場合、罪に問われてしまうこともあります。そのため、ここでは誹謗中傷で問われる可能性がある罪の種類や罪の定義などについて具体的に説明していきます。
人の名誉を毀損した場合は「名誉毀損罪」に問われてしまう可能性がある
度を超えた誹謗中傷をしてしまうと、名誉毀損罪に問われてしまう場合があります。名誉毀損罪の定義は以下の通りです。
名誉毀損罪の定義とは?
- 名誉毀損罪の定義は、公然と事実を摘示して、人の名誉を毀損すること
専門的な言葉が並び、分かりにくいという人もいるかと思いますが、簡単に説明すると「SNSやネット掲示板のように第三者が閲覧することが出来る場所・状態で、具体的な情報を用いながら、特定の人物の社会的名誉や社会的評価を違法に落とした際に成立する罪」ということです。
具体的には、以下のような誹謗中傷をした場合、名誉毀損罪に問われてしまう可能性があります。
名誉毀損罪に該当する可能性がある誹謗中傷の具体例
- AさんはSNSで「○○会社は、痩せるサプリメントという詐欺商品を販売しているクソ会社だ!」という投稿をした
- Bさんはネット掲示板に「○○会社の○○という社員は、自分の旅行費を会社の経費で落としている。」という書き込みをした
- Cさんは「○○さんは自分の子供に暴力を振っている!最低な親だ!」という動画をYouTubeに投稿した
特に重要となってくるのは「具体的な情報を用いているか」という定義です。言い換えると「証拠を用いて判断できる情報か」ということです。例えば、「○○会社は、痩せるサプリメントという詐欺商品を販売しているクソ会社だ!」という誹謗中傷は、本当に詐欺商品なのかということを証拠を用いて判断することが出来ます。
証拠を用いて判断した結果、「詐欺商品ではない」という結論に至った場合、Aさんはサプリメントを販売している会社の名誉を毀損していることになりますし、SNSで誹謗中傷したため「公然と(第三者が閲覧できる場所・状態のこと)」という定義も満たしています。
このように「公然と事実を摘示して、人の名誉を毀損すること」という定義に当てはまる誹謗中傷は、名誉毀損罪に問われてしまう可能性があるので注意しましょう。名誉毀損罪が成立した場合、損害賠償金を請求される他、「3年以下の懲役若しくは禁錮又は50万円以下の罰金」という刑事上の責任を追及される場合があります。
人を侮辱した場合は「侮辱罪」に問われてしまう可能性がある
度を超えた誹謗中傷をしてしまうと、侮辱罪に問われてしまう場合があります。侮辱罪の定義は以下の通りです。
侮辱罪の定義とは?
- 侮辱罪の定義は、事実を摘示していなくても公然と人を侮辱すること。
専門的な言葉が並び、分かりにくいという人もいるかと思いますが、簡単に説明すると「証拠を用いて判断できる誹謗中傷ではないとしても、第三者が閲覧できる場所・状態で人を侮辱した際に成立する罪」ということです。
具体的には、以下のような誹謗中傷をした場合、侮辱罪に問われてしまう可能性があります。
侮辱罪に該当する可能性がある誹謗中傷の具体例
- AさんはSNSで「○○会社はつまらないゲームしか作らない!アホの集まりだ!」という投稿をした
- Bさんはネット掲示板に「○○グループに所属している○○さんはブサイクすぎる!」という書き込みをした
- Cさんは「インフルエンサーの○○は、気持ち悪すぎる」という動画をYouTubeに投稿した
特に重要となってくるのは「事実を摘示していなくても」という定義です。言い換えると「証拠を用いて判断できる情報ではなかったとしても」ということです。
例えば、「○○会社はつまらないゲームしか作らない!アホの集まりだ!」という誹謗中傷は、事実を摘示していない(証拠を用いて判断できない情報)侮辱と言えます。なぜなら、「つまらない」や「アホの集まり」というのは、人それぞれの捉え方によって変わってきてしまうからです。
Aさんは、「つまらない」「アホの集まり」と感じたかもしれませんが、もしかするとBさんは「楽しい」「天才の集まり」と感じるかもしれません。これらに関しては、「証拠を用いて判断しよう」という訳にはいきません。
そしてAさんはSNSで誹謗中傷しているので「公然と」という定義も満たしています。このように「事実を摘示していなくても公然と人を侮辱すること」という定義に当てはまる誹謗中傷は、侮辱罪に問われてしまう可能性があるので注意しましょう。
侮辱罪が成立した場合、1日以上30日未満の間、刑事施設に拘置される「拘留」、又は1,000円以上10,000円未満の制裁金を納付する必要がある「科料」が科されることがあります。
誹謗中傷の定義まとめ
この記事では、誹謗中傷の定義について具体的にまとめました。もう一度おさらいすると、誹謗中傷の定義は以下の通りです。
誹謗中傷の定義まとめ
- 誹謗中傷の定義は「虚像の情報や具体的な理由がない情報で特定の人物を罵り貶め、嫌がらせや悪口を発すること」
度を超えた誹謗中傷は犯罪として扱われてしまうこともあります。特に誹謗中傷は名誉毀損罪という比較的重い罪に問われやすい傾向があるので注意しましょう。