小・中学生のスマートフォン所有率が高まっていますが、それと比例するように「ネットいじめ」も増加傾向にあります。
この記事では、なぜネットいじめが起こってしまうのか原因を探るとともに、被害に遭った場合の対策についても解説していきます。
本記事で分かること
- ネットいじめの原因は
- ネットいじめの被害に遭った場合の対策は
- ネットいじめに遭わないための対策は
もくじ
深刻な問題になっているネットいじめ
2020年10月に文部科学省が公表した「令和元年度児童生徒の問題行動・不登校生徒指導上の諸課題に関する調査」によると、パソコンや携帯電話等で誹謗中傷や嫌なことをされる言われる「ネットいじめ」の認知件数は、前年度比1,590件増の17,924件で、過去最多となりました。
「パソコンや携帯電話等を使ったいじめ」について、学校別の認知件数を見ると、中学校が8,629件と最も多く、小学校は前年度から約1,000件増え、5,608件となっています。
ネットいじめと聞くと、高等学校が多いようなイメージがありますが、高等学校の認知件数は3,437件でした。
原因はインターネットやSNSの普及
内閣府の調査によると、令和元年度の小・中・高校生のインターネット利用率は、なんと93%に達し、うち小学生の約42%、中学生の約75%、高校生の約90%がインターネットをコミュニケーションツールとして利用しています。
SNSなどは、気軽にコミュニケーションを取ることができますが顔を会わせることがないためトラブルに結びつく傾向が高いのです。
SNSなどを用いたいじめは、匿名性が高く、外部からは見えにくいため周りの大人が気づきにくいという盲点があります。
ネットいじめに該当する4つの行動
「ネットいじめ」とは、以下のような行為のことを指します。
- パソコンや携帯電話から、ネット上の掲示板やSNSなどに特定の子どもに関する誹謗中傷を書き込む
- ネット上の掲示板やSNSなどに、実名入りや個人が特定できる表現を用いて、特定の子どもの個人情報を無断で掲載する
- 特定の子どもの悪口や誹謗中傷を不特定多数の携帯電話などにメールで送信し、拡散する
- 特定の子供になりすましてネット上で活動し、その子どもの社会的信用を落としめる行為など
インターネット上で、誹謗中傷を行うことで被害が短期間で極めて深刻なものとなる可能性が高いです。特に拡散することが特徴となっているTwitterでは、1度拡散されると瞬く間に広がってしまい終息させるのが困難となる場合もあります。
インターネットは誰でも簡単に書き込みが行えてしまうことから、子どもが知らない間に被害者にも加害者にもなってしまっているケースも考えられます。
子供たちの未成熟な思考が原因ともいえる
これだけ深刻になっているネットいじめですが、その原因が以下のような子供たちの幼い思考力である可能性も高いです。
- 言葉の影響力への無自覚さ
- 匿名性と万能感
- 嫉妬・恨み・仕返し
言葉の影響力への無自覚さ
子どもたちの大半は、残念ながら自分の言動が被害者に及ぼす影響について自覚していません。
何となくで始めてしまった行動がどんどんエスカレートしてしまい、やがて子どもたちのコントロール力を超えてネットいじめへと発展してしまいます。
匿名性と万能感
インターネット特有の匿名。匿名で書き込むことができる掲示板やブログ、SNSを使用することで子どもたちは自分の名前を隠して簡単に他人を攻撃することができてしまいます。
そして書き込んだことに対して権力の優位性によって、さらに攻撃がエスカレートしてしまいます。
嫉妬・恨み・仕返し
こちらは物理的ないじめと同様で、ネットいじめでも嫉妬や恨み、仕返しは主な原因となり得ます。
一概にそうだとはいえませんが、家庭で虐待を受けていたり、攻撃的なグループに属す子どもがいじめを行う行動をとる傾向にあります。
ネットいじめに遭っているサインを見逃さないで
もし、自分の子どもがネットいじめに遭っていると知ったら親はかなりショックですよね。最悪の場合、自ら命を絶ってしまうことも考えられますので、まずは以下のような子どもからのサインを見逃さないようにしましょう。
- 情緒の変化
- 恐怖心
- SNSからの退会
情緒の変化
気分が落ち込んでいるように見えたり、人付き合いを避けて1人で過ごしている、インターネットとの接し方など、急激な情緒の変化が見られるようであれば、ネットいじめに遭っている可能性があります。
ただ他に原因があるかもしれませんので、一方的に判断するのではなくさりげなく声をかけてネットいじめで困っているのかを確かめるといいでしょう。
恐怖心
学校に行くのを怖がったり、人と会うのを拒む。携帯電話からのメッセージや着信音を怖がるような仕草や表情を見せた場合も何か心配事がある証拠です。
怖がっている様子が続くようであれば、ネットいじめの被害にあっているサインかもしれません。
SNSからの退会
ネットいじめに遭っている人は、これ以上いじめられることがないように登録しているSNSの一部を削除したり、退会したりすることがあります。
理由も言わずに突然アカウントを削除したのであれば、ネットいじめから自分自身を守ろうとしているのかもしれません。ネットいじめの心配がある場合は、一度本人とじっくり話をしてみましょう。
ネットいじめの事例
実際に、ネットいじめが原因で自ら命を絶ってしまった悲しい事例です。
群馬県の県立高校に通う2年生の女子生徒が、市内の踏切内で電車にはねられ死亡しました。自殺とみられています。女子生徒は、「ネットいじめ」を訴えるメモを残していました。そこには、「先生は私の言葉を信じてくれなかった。ネットで悪口を言われているのは本当なのに。証人が覚えてないから、私が助かるために嘘をついたように見えたの?ひどいよ。」学校側は、いじめについての聞き取り調査結果を女子生徒の遺族に伝えるという。
引用元:FNNプライムオンライン
下越地方の新潟県立高校3年の男子生徒が2018年、いじめを受けたことを示唆するメモを残し自殺した問題で、県の第三者委員会は男子生徒がSNSを使ったいじめを受けていたとする調査結果を発表しました。男性生徒は2018年6月27日、家を出た後に行方が分からなくなり、28日に遺体で発見された。生徒のスマートフォンや自室には、いじめを受けたとの趣旨のメモがあり、第三者委員会が調査を行っていました。
引用元:毎日新聞
ネットいじめの対策方法
事例のような悲しいことにならないためにも、以下のようなネットいじめの対策をしっかり知っておく必要があります。
- ネットいじめの証拠を保存する
- ネットいじめ投稿の削除依頼
- フィルタリング機能を利用する
- 相手方に対して刑事・民事措置を行う
- 弁護士へ相談する
ネットいじめの証拠を保存する
ネットいじめの投稿を見つけた場合は、その書き込みをスクリーンショットやプリントするなどして保存をしましょう。掲示板であれば、URLや投稿者のIDや番号、投稿日時などがわかるように保存すると良いでしょう。
SNSであれば、アカウント名やアカウントのアイコンや投稿日時などが、はっきりとわかるような状態でスクリーンショットを撮るのがおすすめです。
ネットいじめの証拠を保存し、誹謗中傷を受けたと証明することができるのは、後々役に立つことがあります。その書き込みが誹謗中傷やいじめに当たるとわかるように、前後の文脈も必要であれば合わせて保存しておきましょう。
ネットいじめ投稿の削除依頼
SNSや掲示板に誹謗中傷が書き込まれた場合、それを見た人が他の掲示板に転載したり、面白半分でどんどん拡散されることがあります。拡散されてしまうと、瞬く間に被害が拡大してしまうため、そうなる前にネットいじめに該当する投稿を削除する必要があります。
投稿の削除については、運営元へのお問い合わせフォームなどから行うことができますので手順に沿って削除依頼を行いましょう。
場合によっては、削除して欲しい投稿のスクリーンショットやURL、誹謗中傷を行った人物のアカウントIDなどを求められることもありますので、しっかり準備しておくようにしましょう。
フィルタリング機能を利用する
未成年は、人生経験が少ないために判断力に欠けることがあります。知らない間に有害の情報にアクセスしていたり、ウイルスへの感染、危険な人物と気づかず交流を行ってしまったなどが考えられます。
そういった犯罪やトラブルに巻き込まれないように、大人が子どもにしてあげることがフィルタリングです。
フィルタリングは、学齢別に制限レベルを変えることができますし、保護者と話し合ってフィルタリングをカスタマイズすることもできます。
相手方に対して刑事・民事措置を行う
ネットいじめを受けた際は、いじめに該当する投稿を削除する対策ももちろん必要ですが、刑事告訴や慰謝料の請求などを行うことも考えられます。
仮に、相手に全く反省する様子が見られない場合や投稿を削除するだけでは抑止効果とならない場合は検討するのも良いかもしれません。
弁護士へ相談する
学校や保護者を交えて話し合いを行っても解決の糸口が見つからない場合は、弁護士へ相談することも解決への近道と言えます。
誹謗中傷に関する投稿を削除したい・相手に対して刑事告訴したい・いじめをやめさせるために警告文を送りたい場合などは弁護士に相談することが得策です。
弁護士は法律のプロフェッショナルですので、法的措置に関して適切なアドバイスを行ってくれますし、現実的解決に向けて動いてくれます。自分自身で対応する必要もなくなるので、ストレスを感じることもなくなります。
まとめ
ネットいじめの概要と対策方法について解説しました。簡単にポイントをまとめておきます。
本記事のポイント
- ネットいじめは小中高生問わずに増加している
- ネットいじめを行う原因はインターネット特有の匿名性が関係している
- ネットいじめの被害に遭ったらまずは証拠を保存する
- 被害を防ぐためにはフィルタリング機能を活用する
- 自身で対策が難しい場合は弁護士へ相談する
今回はネットいじめの原因と対策方法について解説しました。親が見えないインターネットで起こってしまうネットいじめ。いかなる理由でもネットいじめを行うことは許されません。自分の子どもが被害者にも加害者にもならないためには、普段からインターネットの利用方法についてしっかり、話し合う必要があるのではないでしょうか。