相手に対して攻撃的な発言をした場合は、誹謗中傷や名誉毀損の罪に問われる可能性があります。ただ、どちらも意味合いが似ているため「誹謗中傷と名誉毀損って一体何が違うのだろうか?」と悩んでいる人も多いのではないでしょうか?
似ている言葉ですが、実はしっかりと違いがあります。この記事では誹謗中傷と名誉毀損の概要や違い、そして被害に遭った時の対策方法などを具体的にまとめてみました。誹謗中傷と名誉毀損は何が違うのだろうかと悩んでいる人にとって、きっと役に立つはずなので参考にしてみてください。
もくじ
誹謗中傷の概要や具体例を解説
まずは誹謗中傷の概要を具体的に説明していきます。
誹謗中傷とは
そもそも誹謗中傷という言葉は「誹謗」と「中傷」という二つの言葉に分けることが出来ます。誹謗とは「他人の悪口を言うこと」であり、中傷とは「根拠のない情報を用いて、他人の名誉を傷つけること」です。
つまり誹謗中傷とは「根拠のない悪口を用いて、他人を傷つけること」です。
誹謗中傷は法的責任を問われることがある
誹謗中傷は、以下5つの罪に問われることがあります。
誹謗中傷で問われる5つの罪
- 名誉毀損罪
- 侮辱罪
- 信用毀損罪
- 脅迫罪
- 強要罪
それぞれの罪を簡潔に説明していきます。
- 名誉毀損罪
名誉毀損罪に関しては、公然と事実を摘示して、他人の名誉を毀損した場合に成立する罪です。名誉毀損罪に関しては、後ほど具体的に説明します。
- 侮辱罪
侮辱罪は、公の場で人の顔や体形など、他人を侮辱した場合に成立する罪です。
- 信用毀損罪
信用毀損罪は、嘘の情報を流して人の信用を著しく落とした場合に成立する罪です。
- 脅迫罪
脅迫罪は、悪口の度を越えて相手の生命や名誉などに害を加えた場合に成立する罪です。
- 強要罪
強要罪は、相手に脅迫を行い、同意なく行為を行わせた場合に成立する罪です。
誹謗中傷として認められる具体例を紹介
誹謗中傷として認められる具体例を紹介していきます。
誹謗中傷として認められる具体例
- 異性の友人と撮影したツーショット写真を利用して「Aさんは彼女がいるのにも関わらず、浮気をしている最低な男です」というコメントと共にSNSに投稿された。
- 退職した元社員に「株式会社○○は、サービス残業が多くてブラック企業だから早く潰れろ」というコメントを掲示板に書き込まれた。
- 「○○線で○○という人に痴漢をされました」という情報をSNSに書き込まれた。
- 「Aさんはパパ活でお金を稼いでいて、ろくでもない人間だ」という情報をSNSに投稿された。
- 「Aさんは過去に万引きをして捕まった犯罪者だ」という情報を掲示板に書き込まれた。
上記の例が事実であれば誹謗中傷は成立しませんが、嘘の情報であると判断されれば誹謗中傷として成立します。
名誉毀損の概要や具体例などを解説
次は、名誉毀損について具体的に説明していきます。
名誉毀損とは
名誉毀損とは、相手の信用や名声といった社会的地位を著しく落とすことです。名誉毀損が成立した場合は、「三年以下の懲役若しくは、禁錮又は50万円以下の罰金」という刑が科されることもあります。
名誉毀損が認められる条件
名誉毀損が成立する条件は以下の通りです。
名誉毀損が成立する条件
- 公然と事実を摘示して、相手の名誉を毀損した場合
1つ1つ分かりやすく説明すると以下の通りになります。
ポイント
- 公然と:会社内やSNS上などの「不特定多数の人に対して」という意味。
- 事実を摘示して:その情報は「証拠によって嘘か本当かを判断できる事柄か」という意味。
- 相手の名誉を毀損する:相手の「社会的評価を傷つけたかどうか」という意味。
名誉毀損が認められる具体例を紹介
名誉毀損が成立する具体例は以下の通りです。
名誉毀損が成立する具体例
- Aさんの経歴や容姿に対して、攻撃的な誹謗中傷をインターネット上に繰り返し書き込まれた。
- 学校で事件を起こした学生らの批判や個人情報を掲示板に書き込まれた。
- 雑誌に、嘘の情報を掲載された。
- 自分の電話番号やメールアドレスなどを出会い系サイトに書き込まれた。
- 会社の上司に自分の肩書や実名を取り上げられて、掲示板に誹謗中傷の書き込みをされた。
法的には名誉毀損が認められないケース
実は「一般的に見ると名誉毀損ではあるが、法的には名誉毀損として認められない」というケースも存在します。法的には、名誉毀損に当てはまらないというケースは以下の通りです。
法的には名誉毀損に当てはまらないケース
- 「公然と事実を摘示して、相手の名誉を毀損した」という条件を満たしていない場合
- 摘示された事実が真実であると判明した場合
- 社会的評価は下げたが、その被害が小さい場合
- 意見や論評としては認められない場合
- 調査方法の信用性が認められた場合
少しややこしい条件かもしれませんので、1つ例を取り上げて説明していきます。例えば上司Aさんが部下Bさんに対して、名誉を毀損する発言をしたとしましょう。これが他の社員もいるオフィスで行われた場合は、名誉毀損が成立します。
ただ、喫煙ルームに呼び出して、1対1の環境で名誉を毀損する発言をした場合は、名誉毀損としては認められません。なぜなら、周りの人には知れ渡らないように配慮されていたと判断されてしまうため「公然と」という条件を満たさないからです。
このような状態でいくら「名誉毀損だ」と主張しても、法的には認められないので注意しましょう。
注意!
名誉毀損として認めてもらうには「公然と事実を摘示して、相手の名誉を毀損した」という条件を満たしている必要がある。
誹謗中傷と名誉毀損の違いとは
誹謗中傷と名誉毀損の概要についてお伝えしてきましたが、誹謗中傷と名誉毀損の違いは何なのでしょうか?まずはもう一度、誹謗中傷と名誉毀損の定義を確認してみましょう。
ポイント
- 誹謗中傷:根拠のない悪口を用いて、他人を傷つけること
- 名誉毀損:公然と事実を摘示して、相手の名誉を毀損すること
結論は「公然という条件を満たしているかどうか、名誉を毀損しているかどうか」が違いだと言えます。「ピンとこないな」という人もいると思いますので、具体例をもとに考えてみましょう。
具体例
1対1という場面で「お前は本当にバカだ」と言われた。
上記の例は1対1という環境なので「公然と」という条件は満たしていません。ただ「バカである」という根拠がない悪口を用いて、相手を傷つけています。
つまり上記の例でいうと、誹謗中傷には当てはまりますが、名誉毀損には当てはまらないという結果になります。では、下記の例ではどうでしょうか?
具体例
SNSに、加工した画像と共に「Aさんは人を騙してお金稼ぎをしている詐欺師です」という投稿をされた。
上記の例は明らかに「公然と事実を摘示して、相手の名誉を毀損した」という条件を満たしていると同時に、根拠のない悪口で相手を傷つけています。つまり上記の例でいうと「誹謗中傷と名誉毀損の両方に当てはまる」という結果になります。
誹謗中傷や名誉毀損をされた場合の5つの対策方法
誹謗中傷や名誉毀損をされた場合の対策方法は以下の通りです。
ポイント
- 証拠を集める
- 削除請求を行う
- 発信者開示請求を行う
- 損害賠償請求を行う
- 告訴状や被害届を提出する
特に1つ目の「証拠を集める」というところが最も大切です。根本的に、証拠がなければ「誹謗中傷をされた、名誉毀損をされた」と証明することが出来ません。
インターネット上であればスクリーンショット、対面であればメモや録画・録音などを用いて証拠を集めましょう。ただ、画像のみの保存は、画像の加工を疑われてしまう可能性もありますので、余裕があれば紙に印刷して紙と画像で証拠を保存しておくようにしましょう。
誹謗中傷と名誉毀損の違いまとめ
この記事では、誹謗中傷と名誉毀損の概要や違い、そして被害を受けたときの対策方法についてまとめてみました。もう一度おさらいすると、誹謗中傷と名誉毀損の違いは以下の通りです。
誹謗中傷と名誉毀損の違い
- 公然という条件を満たしているかどうか
- 名誉を毀損しているかどうか
誹謗中傷や名誉毀損は誰かが守ってくれるわけではありません。もしも被害に遭ってしまった場合は、今回お伝えした対策方法を参考にしてみてください。