近年、インターネット上の誹謗中傷が多発しています。インターネット上の誹謗中傷はれっきとした犯罪なので、被害届を警察に提出すると警察が捜査して犯人を逮捕してくれることもあります。
このように被害届を提出すると、犯人を逮捕してくれる場合があるのですが、「そもそも被害届の提出方法が分からない」という人も多いかと思います。そのような方のために、この記事ではネットで誹謗中傷された場合の被害届の提出方法について具体的にまとめましたので、ぜひ参考にしてみてください。
もくじ
被害届の受け取りから提出までの流れを解説
ここでは、被害届の受け取り方から提出するまでの流れを具体的に説明していきます。
被害届をインターネットからダウンロードしよう
ネットで誹謗中傷された場合は、警察に被害届を出す必要があるのですが、まずは被害届用の書類をダウンロードする必要があります。
基本的には、インターネット上に被害届のテンプレートがあるので、そちらをダウンロードして使っても問題ありません。しかし、自宅にインターネット環境がないという場合は、近くの警察署や交番に行ってみましょう。
警察署や交番には、被害届が常備されているので「ネットで誹謗中傷されたため、被害届を出したいのですが」と伝えれば書類を貰うことが出来ます。
被害届に被害状況を記載しよう
被害届のテンプレートを取得した場合、次はネットで誹謗中傷されたことで発生した被害状況を被害届に記載していきます。基本的には、以下のような内容を記載していきましょう。
被害届に記載すべき内容
- 被害届を作成した日付
- 被害届を提出する警察署の署長名
- ネットで誹謗中傷された被害者の氏名と住所
- ネットで誹謗中傷された被害者の電話番号とメールアドレス
- ネットで誹謗中傷した加害者の情報(氏名や住所など)
- 該当する罪
- 誹謗中傷されたインターネットサービス名(Twitterや○○掲示板など)
- 誹謗中傷された日時や時間
- ネットで誹謗中傷された背景
- ネットで誹謗中傷されたことによって、被害者が負った損害や被害状況
可能であればネットで誹謗中傷されたという証拠も用意しておきましょう。スクリーンショットのように簡易的なものでも構いませんので、メッセージのやり取りやどのような誹謗中傷をされたのかが分かるような証拠を用意しておくと警察が動いてくれる可能性が高まります。
管轄の警察署に被害届を提出しよう
被害届に必要事項を記入した場合、次は管轄の警察署に被害届を提出しましょう。被害届を提出する際ですが、必ず「管轄の警察署」に提出してください。
管轄とは?
管轄とは、事件が起こった地域を担当している警察署のこと。
もちろん、管轄以外の警察署に告訴状を提出したとしても被害届は受け取ってくれます。しかし、管轄以外の事件に関しては取り扱ってくれないことがほとんどですので、捜査してほしいという気持ちがあるのであればなるべく「管轄の警察署」に被害届を提出しましょう。
被害届を提出した後は、基本的に以下どちらかの行動がとられます。
被害届を提出した後に取られる行動
- 違法性が高いと判断された場合は、事情徴収が行われ、実際に捜査を開始してくれる
- 違法性が低いと判断した場合は、捜査を行わず事件を放置される
被害届を提出すると必ず捜査してもらえると思っている人もいるかと思いますが、実は、被害届を提出したからといって必ず捜査しなければいけないという法律は定められていません。被害届の効果が定められていないため、被害届を受け取った担当者の判断に左右されてしまいます。
「確実に捜査してもらえないのであれば被害届を提出する意味はない」と思っている人もいると思いますが、意味がない訳でもありません。例えば、すぐに捜査してもらえなかったとしても、複数人から同じような被害届が提出された場合は、違法性が高いと判断され、捜査に乗り出してくれることもあります。
また、被害届を提出すると「届出受理番号」を受け取ることが出来るのですが、届出受理番号は様々な保険や法を適用させる場合に必要です。いずれにせよ、ネットで誹謗中傷された場合は必ず被害を受けたという申告を警察に伝えるようにしましょう。
被害届を提出する前と提出後の注意点
ここでは、被害届を提出する前と提出した後の注意点について具体的に説明していきます。
提出する前の注意点:嘘の情報は絶対に記載しないようにする
被害届に被害状況や相手の情報などを記載する場合は、間違っても嘘の情報を記載してはいけません。
例えば、ネットで「バカ」という誹謗中傷をされただけなのに対して、「ネットでバカと言われ、脅迫もされた」と嘘の情報を記載してしまうと逆にあなたが「虚偽告訴罪」という罪に問われてしまう危険性があります。
虚偽告訴罪とは?
虚偽告訴罪とは、加害者を逮捕してもらうことを目的にして、被害届に嘘の情報を記載したり嘘の被害で訴えたりした場合に成立する罪のこと。
虚偽告訴罪が成立してしまうと、3ヶ月以上10年以下の懲役という刑に処される可能性があります。 また、起訴されてしまうと99%有罪となってしまうという事実がありますので、必ず正しい情報のみを記載するようにしましょう。
提出する前の注意点:なるべく早めに被害届を出す
基本的にネットで誹謗中傷された場合は、すぐに被害届を提出するようにしましょう。もちろん、「〇年以内に被害届を提出しなければ受け取りません」というルールがある訳ではないので、極端な話被害を受けてから100年後に被害届を提出しても問題はありません。
しかし、罪には「時効」というものがあるので、被害届の提出が遅すぎると捜査してもらえないということもあります。また、SNSや掲示板などは匿名で利用している人が多い傾向にあります。匿名アカウントから誹謗中傷された場合は、匿名アカウントを特定しなければ損害賠償請求を行うことや罪に問うことが出来ません。
匿名アカウントを特定するためには、誹謗中傷した相手が使っているプロバイダ(回線をインターネットと繋ぐ役割を担っている接続事業者のこと)に対して、相手の個人情報の開示請求という請求を行う必要があります。
しかし、プロバイダに保存されている相手の情報は3~6ヶ月経つと自動で削除されてしまうという特徴があります。
相手の情報が削除されてしまうと相手を特定することが難しくなってしまい、損害賠償請求を行うことも罪に問うことも難しくなってしまうので、なるべくネットで誹謗中傷されてから2ヶ月以内に被害届を提出するようにしましょう。
提出した後の注意点:安易に被害届を取り下げないようにする
ネットで誹謗中傷してきた相手と和解をした場合やそもそも犯人が別人だったという場合は、提出した被害届を取り下げることが出来ます。
しかし、一度被害届を取り下げてしまうと再度提出した場合に、受理してもらえる可能性が著しく低くなる傾向があるため、安易に被害届を取り下げるというのは辞めましょう。
被害届を取り下げると、再度受理してもらえる可能性は低くなるという事実を犯人が知っていた場合、ネットで誹謗中傷してきた相手から「損害賠償金を支払うので一度被害届を取り下げてほしい」という交渉を持ち掛けられることがあります。
そして、被害届を取り下げた途端、連絡が取れなくなってしまうというケースもあります。こうなってしまうとあなたが不利な状況になってしまうので、事件が完全に解決するまでは被害届を取り下げないようにしましょう。
被害届を提出する方法まとめ
この記事では、ネットで誹謗中傷されたという場合に警察に被害届を提出する方法について具体的にまとめました。もう一度おさらいすると、被害届を提出する方法は以下の通りです。
まとめ
- インターネットから被害届のテンプレートをダウンロードする(インターネット環境がない場合は、近くの警察署や交番に行く)
- 被害届に必要事項を記入する
- 警察署に提出する
罪には「時効」があります。時効を過ぎてから被害届を提出したとしても意味がないので、なるべく被害を受けてから早めに被害届を提出するようにしましょう。